塩のことを書こうと思ったきっかけは海の汚染がかなり深刻なために、海塩の代わりに使い始めた岩塩(ヒマラヤンロックソルト)のことを書こうと思ったことが始まりでした。
そして、『お塩』について調べだすと、いきなりヒマラヤンロックソルトのことを書き出せないことがわかりました。塩の生産者や販売元が書かれている記事を読むと、いくつかの疑問が生まれてきました。毎日の食卓に欠かせない大切なお塩のことなので、あやふやなままにはしておけません。
私なりにお塩のことをきちんと理解してから、再確認したお塩の持つ効果の素晴らしさと合わせて、ひとりでも多くの人に、私たちにとって『お塩とは何か』を知ってほしいと思ったからです。
ヒマラヤンロックソルトの頂きはもうすぐそこにまで来ています。ここでは、自然塩にも種類があり、生産者の『にがり』に対する考え方によって、一見同じように見える自然塩にも大きな違いがあることをお伝えします。
私なりにたどり着いた結論と合わせて、お塩に携わる人たちの『にがり』や自然塩に対する思いをまとめてみました。
目次
身近すぎるお塩の知識を深めることが健康への鍵
自然塩の生産者でさえも、塩に含まれる『にがり』の量によっては、塩化ナトリウムが99.5%以上含まれる「精製塩のほうが、体にいい」とさえ言い切る人がいます。それほど、お塩に含まれるにがりの量は重要な問題です。
『にがり』という言葉の意味には、実は2種類ある
問題をややこしくしてしまう大きな原因に、『にがり』が表す意味がその時によって変わることが上げられます。
私たちがまず、『にがり』と聞いて思い浮かべるのは豆乳を固めて、お豆腐にする時に使うにがりではないでしょうか。この場合は、ほとんどマグネシウムだけを指しています。にがり=マグネシウムと思っていいでしょう。
自然塩に記載されていたり、ミネラルがたっぷり入っているお塩であることを伝えるためにも『にがり』という言葉が使われます。
この時にはマグネシウムだけではなく、海水に含まれるその他の栄養素もひっくるめて、にがりと呼んでいます。広い意味でのにがりは、塩化ナトリウム以外の成分を指すようです。ただ、塩化ナトリウムがゼロというわけではなく、自然のことなのである程度残ったり、塩分濃度によっても違いが生まれたりします。
そして、自然塩に含まれるにがりを指すときでも、その中身はまちまち。成分や割合も同じではありません。
にがりの中で一番多い成分は、塩化マグネシウムです。どのくらい煮詰めていくかによって残る成分に違いが生まれます。塩化マグネシウムの他には塩化カリウム、塩化カルシウム、鉄、亜鉛、リン、マンガンなど、どうやら92種類もの微量栄養素が含まれています。
お塩ってすごいですよね。
にがりは必要だけれど、見極めたい黄金比率
お塩のことは調べれば、調べるほど迷宮入りしそうです。
「塩化ナトリウムが99.5%以上の精製塩のほうが健康に良い」という人たちもいれば、「精製塩が主流の今、微量栄養素の不足は体調不良やさまざまな疾患を引き起こす原因になっている」と日本人の体を心配する人もいます。
「自然塩の余分な塩分はカリウムが排出するので問題ない」という人たち、「お塩のにがり、微量栄養素は全く必要なし」と断言する人もいます。
どっちがより真実に近いのでしょうか?
微量栄養素は必要
と主張する人達は、
海は私たちが元々暮らしていた場所であり、陸に上がる時に原始の海の成分を抱えて来たからと考えています。羊水の成分も太古の海そのものです。
そして、微量ミネラルは私たちの体を機能させるための酵素を作り出す時に、必要不可欠な栄養素です。そして、何より塩化ナトリウムばかりの精製塩よりも、味に深みがあり、お料理が美味しくなることが上げられます。
微量栄養素は必要ない
と信じている人たちは、
マグネシウムにはタンパク質を固める性質があるために、体内にある筋肉などを固めてしまう働きを揚げています。そして、海水自体は飲めないこと、海水をそのままお料理に使っていた『コロボックル』たちは背が伸びずに短命だった記録もある。
また、にがりには便通を促進する効果があるので、下痢などの症状になる人もいます。
精製塩には、使い勝手の良さもメリットとしてよく上げられます。ベタつかずにサラサラしていて安価に購入できるために、飲食店や加工食品店ではほとんどが精製塩を使用しています。
どんなお塩を使えばいいのか?
塩に関しては(も)賛否両論あるので、有識者や生産者からの意見だけでは判断するのは、とても難しい。いくつかの意見を参考にしながら、私たち自身が選択していくしかない、と思っています。
体の声に耳を傾けていくことが大切です。
微量栄養素が多いお塩が高品質?
精製塩、自然塩を作っている人たちの意見を平たく見てみると、にがりやミネラルには、バランスが大切であることが伝わってきます。中にはにがりそのものを強くすすめている人もいます。その例が、10年以上前に突如注目を集めた『にがりダイエット』です。
にがりダイエットを実践した人がどのくらいいるのかわかりませんが、「マグネシウムを多く含むにがりの長期的な取りすぎには気をつけたほうがいい?」と私は感じています。
マグネシウムが多いと、塩に苦味が残りお料理に向かないこと。そして、可能な限りにがりを取り除く塩作りをすすめてきた長い歴史があります。自然塩ではあるけれど、微量栄養素にも『バランス』が大切であることがわかります。
今回いろいろな人の意見を読んで、私なりに理解したことのひとつに「微量栄養素が多い塩が良質な塩」とは一概には言えないことがわかりました。
以前は、お塩を購入する時に、配合されてるミネラルの量の多いものを選んでいたこともあります。それだけを選ぶポイントにしてしまうと、苦味の強いお塩を選び、にがり過多になることもあります。
どうして同じ海水を原料にしているのに、「配合されるミネラルの量に違いが生まれるんだろう?」と思う人もいるでしょう。
それは、塩を作る時の工程の違いとお塩を煮詰める時の火を止めるタイミングの違いです。結晶化して、現れる温度がミネラルによって違うからです。
さまざまな自然塩に含まれる主要成分
石川県金沢市にある能登製塩のHPに知名度の高い自然塩の成分がとてもわかり易く表示されていましたので、そのままここに載せさせていただきます。
一番上の『奥能登海水塩』が健康を考えて、能登製塩が作っている自然塩です。
産地 商品名 原材料 種別 製法 食塩相当量 ナトリウム マグネシウム カリウム カルシウム 石川 奥能登海水塩 海水 海塩
(加熱)非直火式低温製法 79.7g 31g 220mg 80mg 480mg 珠洲の海 海水 海塩
(加熱)流下式・平釜炊き 96.5g 38g 390mg 110mg 179mg 大谷塩 海水 海塩
(加熱)揚げ浜・平釜炊き 不明 不明 420mg 120mg 190mg わじまの塩 海水 海塩
(加熱)室内低温自然蒸発結晶 88.9g 35g 295mg 47mg 527mg 東京 海の精(青ラベル) 海水 海塩
(非加熱)流下式・屋内天日 85.68g 34~36g 400~600mg 400~600mg 100~200mg 海の精(赤ラベル) 海水 海塩
(加熱)流下式・平釜炊き 86.4g 34g 700mg 240mg 400mg 小笠原自然海塩ムーンソルト 海水 海塩
(非加熱)天日 82g 32.3g 1390mg 910mg 481mg 沖縄 粟国の塩 海水 海塩
(加熱)流下式・平釜炊き 71.6g 28.2g 1530mg 560mg 548mg 雪塩 海水 海塩
(加熱)逆浸透膜・噴霧加熱式 76.9g 30.03g 2810mg 859mg 859mg 韓国 キパワーソルト 海水 海塩
(加熱)塩田・天日塩・高温焼成 96.3g 37.9g 761mg 208mg 184mg ベトナム カンホアの塩 石臼挽き 海水 海塩
(非加熱)塩田・天日 88.9g 35g 700mg 250mg 500mg キリバス クリスマス島の海の塩 海水 海塩
(非加熱)塩田・天日 92.4g 37.8g 157mg 51mg 827mg フランス セル ゲランドの塩あら粒 海水 海塩
(非加熱)塩田・天日 87.5g 34.45g 520mg 120mg 170mg モンゴル モンゴルの岩塩 岩塩 採掘岩塩
(非加熱)岩塩層をボーリング 99.3g 39.1g 5.2mg 35.2mg 292mg ロシア シベリア岩塩 岩塩 採掘岩塩
(非加熱)岩塩層をボーリング 98.8g 38.9g 36mg 44mg 260mg ドイツ アルペンザルツ 岩塩 溶解岩塩
(加熱)溶解法岩塩にミネラル添加 98.5g 38.8g 82mg 73mg 481mg パキスタン ピンクロックソルト 岩塩 採掘岩塩
(非加熱)岩塩層をボーリング 95.86g 37.74g 110mg 180mg 270mg アフリカ アッサルの塩 湖塩 採掘湖塩
(非加熱)湖に結晶化した塩を採取 99.8g 39.3g 30.4mg 16.4mg 30.8mg 兵庫 赤穂の塩 オーストラリア原塩 海塩(加熱) 輸入塩ニガリ溶解立釜炊き 92g 36g 550mg 20~80mg 10~70mg 愛媛 伯方の塩 メキシコ原塩 海塩
(加熱)輸入塩海水溶解平釜炊き 95g 37.5g 110mg 50mg 90mg 日本 食卓塩 メキシコ原塩 海塩
(加熱)輸入塩、水溶解立釜炊mg添 99g 39g 0.13mg以下 0.35mg以下 0.30mg以下 食塩(JT塩) 海水 海塩
(加熱)イオン交換膜塩 99.57g 39g 18mg 100mg 22mg 広島 海人の藻塩 海水・ホンダワラ 海塩
(加熱)平釜炊き・焼成 94.5g 37.2g 826mg 552mg 358mg ※上記成分分析比較表は各社ホームページ及び塩図鑑(東京書籍)等より抜粋し、一覧にしたものです。
能登製塩ではお塩の中に含まれる塩化ナトリウムの量は、海水に近いものを目指しています。海の塩の中に含まれる栄養素の中で、塩化ナトリウムの量は約8割です。そのため、塩化ナトリウムの量は、79.7gになっています。
表に書かれている『塩分相当量』とは塩化ナトリウムを食塩にした場合、どれだけ食塩になるかの量です。いままでは、塩化ナトリウムを表示するだけでよかったのが、実際の塩分量まで、きちんと表示することが義務化されつつあります。
塩化ナトリウムは塩素とナトリウムの化合物で、塩素の重さは、35.5g。ナトリウムは23gなので、2つを合わせると58.5gです。ナトリウムが1gの時には、実際の塩分は、ナトリウム✕2.45(58.5÷23=約2.45)が塩分相当量になります。
理想のお塩を作るための生産者のこだわり
1997年に約90年続いた、お塩の専売法が廃止されます。これによって、ようやく塩を作り、販売することが自由にできるようになります。さまざまななお塩を作るメーカーだけではなく、個人でもそれぞれの思いを持ってお塩が作られるようになりました。
あるひとりの生産者は通常、32%まで塩分濃度を上げるところを、先輩からの助言をもとに、塩分が30%までしか加温をしていません。それは、30%以上の塩分濃度にすると、マグネシウムの析出(せきしゅつ)がふえるために、苦味の強いお塩に仕上がってしまうためです。
温度を上げて水分を蒸発させていくと始めにカルシウム、そしてナトリウム、カリウム、マグネシウムの順番に、海水から結晶となって現れてきます。
また、塩っ辛さの取れた優しい仕上がりにするために、後半の火加減を弱火にして、できるだけ大きな結晶になる工夫をしている人もいます。
成分がしっかりと表示してあること
どんなに目を引くパッケージを使い、書かれていることが魅力的であっても、まずは、パッケージの裏返してみてください。
精製塩なら成分のところに『塩化ナトリウム99.5%』などと表示されているだけだと思います。自然塩なら、塩化ナトリウム以外に含まれる微量成分がきちんと書かれているはずです。
それぞれのお塩によって成分の含有量は違いますので、どんなお塩がいいのかは好みもあるでしょう。価格も参考にしながら2,3種類のお塩を常備しておくと、使うお料理によって使い分けができるのでおすすめです。
ただし、お塩に含まれる成分を数値化するためには費用がかかることから、個人でお塩を作っているところでは、また、あえて数値を出していないところもあります。『海水を使って塩を作っている=成分は海と同等』という考えです。
お塩ひとつとっても、品質や中身は千差万別です。自然塩なら、どれも同じということはありません。価格だけではなく、原料、作り方、成分も確認することで、毎日の食卓と健康面に違いが現れます。
どんな食材でも選択肢は、私たち消費者にあります。美味しさと健康面を同時に満たすことのできるお塩を見極める術を育てていきましょう。
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