『一物全体食』を心がけるようにすると、私たちの体に必要な栄養素がバランス良くとれます。
キッチンでご飯を作るときや普段何気なく購入している主な食材を見直すと、一物全体食に近い食生活を始められます。ちょっと意識を向けるだけで、意外と簡単にできますので、健康で笑顔で暮らすために参考にしてください。
ポイントは『丸ごと』です!
目次
多くの人におすすめしたい『一物全体食』
ひとつの食べ物(いのち)を食べる時にできる範囲で丸ごと食べると、必要な栄養素をバランスよく取ることができます。
例えば、新鮮なイカを買ってきて、そのイカのワタを使って、イカの塩辛を作ります。するとイカの命を丸ごといただく『一物全体食』です。
いくら新鮮なイカが売られていても、イカをさばいてチャチャッとイカの塩辛を作れる人はなかなかいないでしょう。ここでは、もっとハードルを下げた、簡単な一物全体食の紹介をします。
実は、私達の普段の食生活は、おいしくって栄養価の高い部分を捨ててしまっていることが多いんです。わざわざ、サプリを買って栄養補給をしなくても、調理の仕方をちょっと変えることで、微量栄養素を補充することができます。ぜひ、免疫力をアップして、健康な毎日をすごしましょう。
皮に集中している、生命を維持するファイトケミカル
私たちの体全体を覆う皮膚は私達の命を様々な危険や外敵から守りながら、体温調節をしたり、それこそ美しさを引き出したりしています。野菜も同じです。表面に傷がついてしまった野菜は、その傷が浅ければ、傷口がふさがっていきますが、皮膚が傷ついてしまったことが原因で、野菜全体が傷んでしまうこともあります。
野菜を覆っている皮膚には、その野菜自体を守る働きがあります。
抗酸化力が強い成分が皮には多く含まれています。今で言う「ファイトケミカル」の働きをする成分が皮にはたくさんあるのです。捨ててしまったり、剥いてしまったりしてはもったいない。
皮にしかない成分をできるだけ、取り入れるようにしましょう。
皮をむかずに食べると農薬が心配
農薬が心配なので、野菜の皮を剥く人もいるでしょう。
確かに多くの農家では、野菜や果物を育てるときに虫や病気から作物を守るために、薬を使うことが当たり前になっています。
日本は、他の国と比べてもかなりの農薬の量を使用しているようで、その行く先が気になります。使われた農薬はそれが化学的なものであれば分解するのは難しいですので、畑や田んぼ、そして野菜の中に残ります。
皮をむけばある程度、農薬の量のを減らせるかもしれません。でも、問題はもう少し根が深いと思います。農薬をたくさん使用した畑で、作られた野菜にどれだけの栄養が残っているのか、とても気になります。そして、畑にも農薬は残り、雨と一緒に川に流れ海へとたどり着きます。
すべての野菜をオーガニックに買えることは家計的にも大変だと思いますので、可能な範囲で、オーガニック栽培で育った野菜を買うようにしましょう。そして、プラスのお金を出して買った、オーガニック野菜こそ皮をむかずに丸ごと調理して、いただきましょう。
オーガニック野菜は高い?
有機栽培で作られた野菜は、やっぱり高いと思っている人が、ほとんどだと思います。確かに、おしゃれなスーパーなどで、オーガニックの野菜を買うと、聞き間違えかと思うほど、高いことがあります。
個別に野菜を買うと、どうしても単価が高くなってしまいますので、値段を気にしないで購入するための工夫が必要です。例えば、生活クラブなどに入会すると、低農薬の野菜をお手頃な値段で買えます。
有機農家から直接、野菜を定期購入すると出費を抑えた価格で、野菜を送ってもらえます。どんな野菜が送られてくるのか、箱を開けてみるまでわからないこともあるのですが、届いた野菜をどんな風にお料理しようかと楽しみが生まれます。
旬の野菜を選ぶと化成肥料や農薬を減らせます
その野菜の旬に合わせて栽培をすると、化学肥料も農薬も少なくてすみます。本来は冬に育つ白菜や人参などを無理やり夏に育てようと思うと、病気になりやすいために薬の量が増えていきます。
そして、「美味しいか?」というと残念ながら、旬の人参や白菜には到底かないません。科学肥料をどれだけ加えても、無農薬で育てられた旬の野菜の美味しさにはおよびません。
皮ごと安心して食べられる野菜を見極めるためには、まず、野菜の旬を知ることが大切です。野菜の旬がわかれば、農薬が比較的少ないものを選べます。また、旬の野菜は安く売られているにもかかわらず、栄養価も高く美味しいのです。
そして、そして旬の野菜の持つパワーは、その季節に暮らす私達にとってまさしく必要な食べ物です。秋から冬にかけて実る、さつまいも、里芋、大根、人参などの根の野菜は、野菜の中でも「陽性」の野菜になり私たちの体を暖める作用があるんです。
霜に当たった人参や大根は、畑の泥を落としたら、丸かじりしたくなるほどのおいしさです。台所で切りながら、思わず、つまみ食いをしてしまいます。子供も小さい時には、手に持てる大きさに、大根や人参を切っておけば、バリバリかじって食べていました。
春に草の中から顔を出す山菜は、少しほろ苦いのが特徴ですが、この苦味が冬の間に溜まっていた老廃物を押し出す力があります。
それぞれの季節ごとに私たちに必要なものが、身の回りに自然に実ります。
人参の葉やネギの根っこも活用して、一物全体食を目指そう
玄米や雑穀を主に食べていた昔の人が江戸時代になると、特に豊かな階級の人のが精米が進んだ白米を食べることが主流になり、『江戸病』と言われた『脚気』が流行ったことがあるようです。
今よりも遥かに野菜の栄養価が高かった時代に、玄米から白米に変えた人たちの体調に、大きな変化が現れました。私たちの体を正常に動かすためには、食物の持つ栄養素を丸ごと頂くことが大切です。
にんじんの葉っぱのおいしさ
葉っぱのついた人参はなかなかお店では売られていないので、見つけるのは大変かもしれません。もし、葉っぱがついて売られている人参を見つけたら迷わず買って、葉っぱもお料理して食べましょう。
人参はセリ科なので、葉っぱはセリに近い香りと味がします。人参が大きく成長したあとは、葉っぱも立派になっているのでサラダ向きの柔らかさはありませんが、ジューサーなどを使って、他の野菜とジュースにすれば生のままでも美味しく食べられます。
おすすめの調理方法
人参の葉っぱのおすすめの調理法を2つお伝えします。油との相性が良いのですが、オーブンなどでかりかりに焼いて、バジル代わりに使うこともできます。あっ、胡麻和えも美味しいです。
人参と葉のかき揚げ
人参の葉っぱは硬いので、油であげるとその硬さが活かせて、とても美味しい1品になります。葉っぱだけの天ぷらも美味しいのですが、根の部分と一緒にかき揚げにすると色もきれいなのでごちそうに早変わりです。
ポイントとしては、人参の根の部分をどのくらいの大きさできるかです。あまり薄すぎても、すぐに火が通ってしまいしかも歯ごたえのない仕上がりになります。ある程度厚みのある大きさに切りましょう。
揚げ物をする時、全てに言えるコツをお伝えしますね。油に野菜を入れたあとに、すぐにひっくり返さないことです。気になってつい菜箸で触ってしまいがちですが、ここが肝心です。半分以上火が通ってから、空気に触れされながら、裏返します。両面色よく上がったら、網に移す前に、菜箸ではさんだまま10回位油を切りましょう。このことを気をつけると、冷めてもカラッとした揚げ物になりますので、試してみてくださいね。
(油の節約にもなり、カロリーも抑えられヘルシーです。)
人参とにんじんの葉のふりかけ
人参の葉は、ザクザクと1cmほどに切っておきます。油を敷いたフライパンで、塩と一緒に葉っぱをまず炒めます。火がよく通った頃に、皮ごとすりおろした人参の部分を加えて、炒めます。ある程度、水分が飛んだたら出来上がりです。
塩で味を整えてください。
緑の葉の色と、オレンジの色の人参のとってもきれいなふりかけです。そして、驚くほど甘いんです。「絶対に砂糖を入れたでしょう?」と思えるほどです。
冬の寒さにあたった人参を使ってくださいね。
にんじんの葉っぱの持つ栄養
人参の葉には抗酸化力の高い、カロテンがたくさん含まれています。ナトリウムを体の外に押し出してくれるカリウムも豊富です。高血圧気味の人には、ぜひ、人参の葉っぱをたくさん食べてほしいです。
あとは、ビタミンKが100gあたり、160μg、葉酸も73μg含まれているので、これから妊娠を考えている人や授乳中の人に嬉しい栄養素も含んでいます。
その他には、パテトン酸、カルシウム、亜鉛、リン、銅、マンガンなどが含まれています。
高い利尿作用のある、ねぎの根っこ
ネギの青い部分には、ビタミンÇやβカロチンが多く含まれ、風の予防や、疲労回復の効果が期待できます。白い部分に含まれている硫化アリルは、消化を手助けして、夏バテや胃腸の働きを回復する作用もあります。
そんなネギのパワーをギュッと濃縮しているのが、根っこの部分です。根っこ自体には、膵臓や脾臓の働きを助け、糖尿病の改善にも効果があると言われています。
泥付きのネギが売られているのを見つけたら、しっかり泥を洗い流して、ネギの根っこまで、活用してみてください。
ねぎの根っこのおいしい食べ方
シンプルに素揚げが一番美味しいです。
根の部分だけを切ってしうとお料理しづらくなるので、根がついているところから切り落として調理します。中温の油でカラッと揚げて、揚げたてをいただきましょう。
大根の皮を別にお料理すれば、大根だけで2品完成
大根やじゃがいもをお料理する時に、皮をむく人は多いのではないでしょうか?
もちろん、傷んでいたり黒ずんでいる所があれば、包丁を使ってその部分は取り除きましょう。じゃがいもの場合にはお陽さまがあたって、緑色に変わってしまったところも迷わず、取り除きましょう。
それ以外の部分は皮の栄養も一緒に食べたいので、そのままお料理します。ふろふき大根だって、大根のサラダでも、皮付きのままお料理してもとても美味しく仕上がりますよ。
夕ご飯を作りたいけれど、野菜が大根しかない場合がもしあれば、皮と身の部分で簡単に2品作れる方法があります。
厚くむいた大根の皮は、ザクザクと一口大に切り、少し多めの油で炒めます。中火くらいがおすすめです。皮の厚さにもよりますが、かなり厚めに切った時には、水を少し入れて、蓋をしましょう。火が通れば、お醤油を回しかけて、焦げ目がつく少し手前で火を止めます。
辛いものが食べたい時には、鷹の爪などを一緒に炒めておくと、ピリッと辛い大根の皮のきんぴらになります。
皮をむいたあとに残った白い部分はサラダでも、ふろふき大根でも、好きなようにお料理すれば1本の大根で美味しい夕ごはんが出来上がります。
「サツマイモを食べると胃がもたれる人」は、皮を食べていない?
作物を丸ごと食べると必要な栄養素がしっかり取れるだけではなく、体に負担がかからず、消化を助けてくれることもあります。
サツマイモはお腹がもたれるから、好きではない人がいます。もしかしたらその人は、さつまいもの皮を食べずに、中身だけを食べているのではないでしょうか。サツマイモは、皮ごと食べることで消化されやすくなります。
しかも、やっぱりサツマイモの皮にも、身の部分以上に大切な栄養素がたくさんあるんです。
食物繊維は、皮に5倍も含まれています。ビタミンÇだって、皮のほうが断然多いです。抗酸化作用の高いポリフェノールは、皮にだけ含まれているんです。
美肌効果だって、アンチエイジングだって期待できます。
こんなに栄養豊富な皮を(見た目はなんの栄養もなさそうですが…。)食べないなんて、もったいないです。健康と美容に必要な栄養素をみすみす捨てているのと同じです。
子供のおやつには、サツマイモか玄米おむすびで決まりですね!(毎日とは言いませんが、小さい時から、お芋や玄米おむすびを食べる習慣をつけておくと、その子が大きくなってから、食生活が大きく乱れることを防ぐことができます。)
私たちは小さいときに「美味しい」と感じた食べ物をずっと美味しいと思って選んでいきます。
まだまだある、身の回りにある精製度の高いもの~小麦粉と砂糖
野菜だけではなく私たちの食生活は、とても大切な部分を取り除いて出来上がっていることが多々あります。
主食のお米が、まず、糠と胚芽を取り除いた白米であること。パンも、普通にお店に並んでいるものは小麦から、外側の皮を取り、胚芽と胚乳を落としたあとに残る白い部分だけを使って焼かれています。
とても軽い仕上がりなので、食べやすいのですが、ミネラルなどの栄養素はほとんどなく、ほぼ「100%でんぷん」と言えます。そのため、精製度の高い小麦で焼かれたパンばかりを食べると、食後に血糖値が上がりやすく体や精神面でも負担がかかります。
粒食よりも粉食のほうが、血糖値が上がりやすいのも特徴です。
そして、もうひとつ意識することで、私たちの健康を大きく左右することができるのが「砂糖」です。
きっと、お米も小麦も砂糖も、もともとから白いものだと思っている人もいるでしょう。
いえいえ、真っ白な砂糖も小麦粉も、私達の体を支えるためのミネラルやビタミンを精製し取り除いた状態のものです。
まとめ~まずは知ることで選択肢が広がる
何が何でも一物全体食をして絶対に玄米、絶対に全粒粉や黒糖にてんさい糖を使った食べ物だけを食べよう!なんて思ってしまったら、それこそ、ストレスも溜まりますし、毎日の食事が楽しいものではなくなってしまいます。
ここまで読んでくれた人は(ありがとうございます)、似たような食べ物に見えても、中身をしっかりと意識すると命を支える食べ物として、大きな違いがあることが感じられたと思います。
まずは、知ることが私達自身の健康を守る第1歩です。(子供がいる人は、あなたの大切な子供の健康も。)
そして、目の前に選択肢があることがわかります。パン屋さんで、胚芽入りのパンと真っ白い食パンが売られていたら、胚芽入りのパンをトレーに乗せる。スーパーで、白砂糖が大安売りで売られていても、てんさい糖を買ってみるなど。ひとつひとつできることから、はじめて行くことができます。
もちろん、今日は真っ白いパンにお気に入りのジャムをたっぷり塗って食べたいと思えば、そうすることで気持ちが満たされます。
今までの食生活を丸ごと変えるのは大変ですし、揺るぎない玄米菜食者になる必要もないと思います(もちろん目指すのも自由です)。
できる範囲で、楽しみながらする。
私は、これが大切だと思います。
私たちの体は、私達が選択して食べたものから作られていきます。健やかな体と気持ちで毎日をすごすために、上手に一物全体食を取り入れていきましょう。
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